国際収支統計について
国際収支統計とは?
国際収支統計とは、ある国が外国との間で行った財貨、サービス、証券等の各種取引や、それに伴う決済資金の流れなどを体系的に把握、記録した統計表のことです。
モノや資金の外部との出入りを記録するという意味では、一国の対外的な家計簿のようなものと言えるでしょう。
現在、広い意味での国際収支統計とは、
(1)一定期間の経済取引の受払を集計したフロー統計(狭義の「国際収支統計」)
(2)年末時点における対外債権債務残高の価値及び構成を記録した「残高統計」
の二つを指します。
国際収支統計を作成する上では、いくつかの制度的な枠組みが存在します。まず、国際通貨基金(IMF)との協定(注1)により、加盟国には国際収支に関する情報の提供が義務付けられています。そして、IMFが求める統計の品質を達成・維持する必要などから、いずれの国でも法律に基づいた強制力のある報告制度が作られています。
わが国の場合、外為法(「外国為替及び外国貿易法」)によって財務大臣が定期的に統計を作成し閣議に報告することが定められていますが、実際には日本銀行が財務大臣の委任を受けて、企業や個人から提出された各種のデータを集計し統計を作成しています。
(注1) IMFでは、標準ルール協定第8条において加盟国の一般的義務を規定しており、この義務の一つとして情報提供義務を挙げています。 提供すべき情報には、国際収支統計のほか、外貨準備高、国民所得、外国為替相場等があります。
国際収支表の構成項目
経常収支
貿易収支、サービス収支、所得収支、経常移転収支から成ります。
貿易収支
財貨の輸出入をFOB価格で計上したもの。 貿易統計をベースとしていますが、貿易統計が輸出をFOB価格、輸入をCIF価格で計上するのに対し、国際収支統計は輸出・輸入ともFOB価格で計上されています。 また、貿易統計が通関をもって取引を認識するのに対し国際収支統計は所有権の移転をもって取引を認識するため、統計上の金額には違いが出てきます。
サービス収支
国境を越えた(居住者と非居住者の間の)サービスの取引を計上しています。 サービスとは、輸送、旅行、通信、建設、保険、金融、情報(コンピュータ・データサービス、ニュースサービス等)、特許権使用料、その他営利業務、文化・興行、公的その他サービス等を指します。
所得収支
国境を越えた雇用者報酬(外国への出稼ぎによる報酬の受取等)および投資収益(海外投資による利子・配当金収入等)の支払を指します。
経常移転収支
政府間の無償資金援助、国際機関への拠出金など、資産の一方的支払いを計上しています。
資本収支
居住者と非居住者の間で行われた資産・負債の受取を計上します。「投資収支」と「その他資本収支」から成ります。
投資収支
国境を越えた直接投資(経営への支配を目的とした投資。原則出資比率10%以上)、証券投資、金融派生商品、その他投資(貿易信用、現預金の動き等)を指します。
その他資本収支
資本移転(固定資産の取得・処分にかかる資金の移転等)、その他の資産の動きを計上します。
外貨準備増減
政府通貨当局の管理下にある対外資産の増減を表わしています。 外為市場における市場介入による外貨の増減や、政府が保有する外債の利子の受取、円安による政府保有通貨の価値増加などによって増減します。
国際収支統計作成上の国際的ルール
基本的には各国ともIMFマニュアル(「IMF国際収支マニュアル」)に基づいて統計を作成しています。 IMFによって定められたこのマニュアルは、国際収支統計の作成方法に関するグローバル・スタンダードと言うべきものです。 そしてこのマニュアル自体は、国際的な金融取引の変化や統計手法の進展等に応じて順次改訂されており、最近では金融派生商品などの新しい金融取引の広がりやサービス取引の多様化等の変化に対応して1993年に全面的な改訂が行われました(第五版)。 この新マニュアルの刊行を受け、わが国でも本格的な改訂作業が進められ、96年1月分から現行ベースの統計に移行しています。
国際収支統計については、各国とも環境の変化を見据えながら望ましい作成方法を常に模索しています。 特に近年、東アジアの通貨危機を教訓とする国際的な金融システム強化や、途上国の経済発展を支える重要な柱となっている外国人労働者の本国送金の把握などの観点から、グローバルな資金の動きをより正確かつ詳細に監視していく必要があるとの認識が広がっており、IMFを中心に国際収支統計の一層の整備・充実に向けた取り組みが進められています。
公表内容に関する国毎の違い
公表・作成機関や頻度等についても、国によって多少違いがあります。 例えば、G7諸国及び中国では、アメリカ、英国、カナダのいわゆるアングロサクソン系の国々とそれ以外の国々とで、大まかに分けることができます。
アメリカ、英国、カナダでは、政府の統計局が国際収支統計の全般的な作成に責任を負っています。ただし、銀行関連データに関しては、中央銀行が作成に関与している点が特徴です。また、統計はサーベイ(アンケート調査)を基に作成されており、四半期ごとに作成・公表されることも特徴です。
一方、日本、ドイツ、フランス、イタリア、中国では、基本的には中央銀行が統計の作成・公表の責任を負っており、銀行の決済報告を基に作成してきたという経緯もあって、公表頻度は月次(中国は半期)となっています。その中で、イタリア、中国は、国際取引のモニタリングを行う外国為替局/外貨管理局が中心的な役割を担っている点で、日本、ドイツ、フランスと異なっています。また、フランスと日本では、大蔵省/財務省と中央銀行が協力して作成・公表を行っているという特徴もあります。
| - | 日本 | 米国 | 英国 | ドイツ |
|---|---|---|---|---|
| 統計公表機関 | 財務省 日本銀行 |
商務省経済分析局 | 国立統計局 | ドイツ連邦銀行 |
| 統計集計期間 | 日本銀行 | 商務省、財務省 連邦準備制度 |
国立統計局 | ドイツ連邦銀行 |
| 表示通貨 | 円 | UDドル | ポンド | ユーロ |
| 公表頻度 | 月次 | 四半期 | 四半期 | 月次 |
| 公表時期 | 6〜7週間後 | 11〜12週間後 | 翌四半期 | 5〜6週間後 |
| - | フランス | イタリア | カナダ | 中国 |
| 統計公表機関 | 大蔵省 フランス銀行 |
イタリア銀行 イタリア外国為替局 |
カナダ統計局 | 外貨管理局 (中国人民銀行) |
| 統計集計期間 | フランス銀行 | イタリア銀行 イタリア外国為替局 |
カナダ統計局 カナダ銀行 |
外貨管理局 (中国人民銀行) |
| 表示通貨 | ユーロ | ユーロ | カナダドル | USドル |
| 公表頻度 | 月次 | 月次 | 四半期 | 半期 |
| 公表時期 | 6〜7週間後 | 30営業日後 | 60日後 | 3〜4ヶ月後(半期報) 4〜5ヶ月後(年報) |
国際収支統計から読み取れる事
経常収支の動きの概要
2004年中の国際収支の動向をみると、日本の経常収支は18.6兆円と(前年15.8兆円)、2年連続して過去最大の黒字を記録しました。
内容をやや詳しくみると、経常収支黒字拡大の最大の要因としては、(1)「貿易収支」の黒字拡大が挙げられます。
アジア向け輸出が伸びを続けたほか、前年は減少していたアメリカ向け輸出もアメリカ景気の拡大を背景に増加に転じました。
また、(2)「所得収支」の拡大も経常収支の黒字拡大に寄与しました。
これは、本邦企業の海外現地法人の収益好調により、直接投資収益が増加したことや、対外証券投資残高の累増等を受けて、証券投資収益が増加傾向を辿っていることによるものです。
わが国の対外純資産残高は、2004年末時点で186兆円となっており、91年以降、世界最大の対外純資産保有国であり続けています。
その資産から得られる利子・配当金の受払を示す所得収支の黒字は、増加を続けており、2004年には9兆円を超え、貿易・サービス収支の黒字(10兆円)に迫る額となりました。
2005年に入ると、輸入の増加から貿易・サービス収支の黒字が縮小気味であることもあって、所得収支の黒字は、貿易・サービス収支の黒字を上回る勢いを示しています。
これまで、わが国の経常収支の黒字は、貿易・サービス収支の黒字を主因としたものでしたが、その構造が徐々に変化してきている様子がうかがえます。
資本収支の動き
2004年のわが国の資本収支は、1.7兆円(前年7.7兆円)と、2年連続して流入が続きました。
内訳をみると、2003年に最大の資金流入項目となっていた「その他投資」は、外銀海外店からの資金流入減少を背景に大幅に流入超幅が減少しました。
しかし、(1)海外投資家が本邦国債の取得を進めた結果、「証券投資」が前年の流出超から流入超に転化したことや、(2)通信分野等への対内直接投資により、「直接投資」の流出幅が減少したことにより、トータルでは資金の流入が続く形となりました。
なお、証券投資については、わが国の経済指標や企業業績の改善に着目した、海外投資家による日本株の購入の動きが継続していることが注目されます。
こうした海外からの資金流入に弾みがついたことが、2005年夏場以降の日本の株価の上昇に寄与していると指摘されています。
国・地域間の資金フロー
経済のグローバル化の流れの中で、証券投資や直接投資の国・地域間の資金フローにも関心が寄せられていますが、国際収支統計はその分析にも非常に役立ちます。
2004年のネットのデータをみると、日本からアメリカに対して340億ドルの資金が流れている一方、日本は欧州から709億ドルの資金を受け入れています。
これに対して、欧州からアメリカに対しては、2,059億ドルの資金が流れています。
そこから、国際的な経済の結びつきを読み取ることができます。
また、2000年には、欧州からアメリカに向けて4,300億ドルにのぼる活発な証券投資、直接投資が行なわれ、当時のユーロ安の一因となったとも言われています。
国際収支統計のダウンロード
http://www.boj.or.jp/
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/bop/bop/index.htm
http://www.mof.go.jp/
http://www.mof.go.jp/1c004.htm
